人気・知名度ともに高いお笑い芸人、東京ダイナマイトハチミツ二郎さん(吉本興業)。
これほど有名な芸人さんが、なぜ今流行りのYouTube進出ではなく、会社員になる道を選んだのでしょうか。
今回は、気になるそのきっかけ、そしてなぜIT業界を選んだのかをまとめました。
ハチミツ二郎さんが会社員になろうと思ったきっかけ
2019年9月。
ハチミツ二郎さん(以降 二郎さん)は、コンビニエンスストアから消えた”成人向け雑誌”を憂い、『エロ本』(東京キララ社)制作プロジェクトを立ち上げ、その運用資金をクラウドファンディングで集め始めました。
クラウドファンディングとは、ざっくり言うと「プロジェクトに共感した人から資金を投資してもらえる仕組み」で、そのリターンとして何かしらの特典を付けますよ、といったものです。
二郎さんの展開したクラウドファンディングでは、20万円(最高額)のリターンとして「雑誌の中で二郎と対談する権利」を付けていました。
本人は「まさか20万円の投資をしてくれる人なんていないだろう」と考えていたそうですが、なんと20万円を投資する人物が現れたのです。
その人物とは、とあるIT企業の社長でした。
20万円の投資をしてくれるとは思っていなかった二郎さんは、「対談だけでは悪い」と考え、そのIT社長へ連絡。
話しているうちに、IT社長の職場と二郎さんの自宅が近いことが判明、「一回飲みにいきますか」といった流れになりました。
面識のないIT社長と飲みの席で「お誘い」
これまで、お笑いにしか自分のアイディアを反映させたことがなかった二郎さんは、以前から抱えていた思いをこの飲みの席で社長にぶつけました。
会議に出て、アイディアだけ出してお金がもらえるような仕事ってないですかね?
例えば……
新製品の水の名前を考えたり。
もちろんボケはなし、ですよ。
そういう仕事ってないですかね
ありますよ、お願いします。
このようなやりとりがありました。
次に会ったとき、IT社長にこんなことを言われたそうです。
その都度(会議へ)来たときにギャラを払うよりも、うちに就職してみませんか
突然の申し出に、『この人は本気なのだろうか』と戸惑う二郎さん。
その疑念と同時に、”自分が本気で働く気があるのかを見定められているような感覚”になり、このときは踏み込めませんでした。
さらにその後の『エロ本』の出版パーティで二人は再会し、そこでも「社員にならないか」ともう一度誘われ、そのとき本気なのだと分かりました。
- 吉本興業の仕事があるときは来なくてもいい、欠勤扱い。
- 来れるときだけ来る。
- 東京では劇場に入るのは昼なので、朝会社に来て昼までいて、そのあと劇場に行く。
- 劇場の楽屋にパソコンを持ち込んで、テレワークみたいな感じでやれば、両立できる。
2度の面接を経て、二郎さんは2020年4月、株式会社ソノリテの正社員となりました。
芸人以外の働き口を求めた理由、「お金」と「大病」
師匠譲りの”破滅願望”
二郎さんは若手芸人時代に親から勘当され、住む家もなく借金を150万円ほどつくりました。
そのときの収入はライブの賞金のみでしたが、周囲に恵まれていたため飲食には困らなかったそうです。
そんな二郎さんの師匠はビートたけしさんということは有名です。
では、ビートたけしさんの師匠は一体だれなのか。
それは、深見千三郎(ふかみせんざぶろう)さんという方です。
たけしさんは師匠の千三郎さんから
「芸人は芸人らしくのたれ死にしていくもんだ。世の中のためになることは何もしないで、くだらないことばかりしていて、やくざと変わりないんだぞ。それが幸せな生活なんかどうして求められるんだ。ばかたれが」
という教えを受け、これがカラダの奥に入り込んでしまい、未だに抜けないそうです。
いい車やいい場所での食事をしていると、これでいいのか?という葛藤が生まれ、きたないところへ行くとホッとすると語っています。
二郎さんが組んでいるお笑いコンビ「東京ダイナマイト」は2001年、オフィス北野に入りました。
しだいにテレビ出演の増えてきた二郎さんは、どんどん収入が増えていきます。
お金が入るとすぐ派手に振舞ってしまい、後輩たちが集まる。
やがてその集まりは「二郎会」 と呼ばれるようになります。
二郎会での振舞いは、当時の確定申告に携わっていた税理士いわく、1年で1,000万円を超えていました。
そんな「10年で1億円を使っていた生活」も、気付いてみると貯金ゼロ。
たけしさんの思う、芸人らしい「のたれ死に破滅願望」を二郎さんは受け継いでいたようです。
死んでもおかしくない大病
2018年7月。
大阪の劇場に出演していた二郎さんは、この日の公演を終え、東京へ戻るためにタクシーで新大阪駅へ向かっていました。
しかし新大阪駅手前で息苦しくなり、そのまま病院へ。
担架に乗せられる余裕もなく、車いすに乗せられ、そのときの周囲の医師からは
「死ぬぞ、死ぬぞ」
「家族も呼ばなきゃ駄目だ」
「ちょっと今晩持たないかもしれない。今、家族を呼んでます」
との声がはっきりと聞こえたそうです。
じつは3日前から40度の高熱があり、その高熱が原因で肺炎を発症、急性心不全でした。
その後、ICU(集中治療室)で酸素吸入を受け、一命を取り留めました。
その日の夜、奥さんと娘さんが病院に到着、娘さんの顔をみた二郎さんは「このままで自分、のたれ死ねないな」と思ったそうです。
そして5日後東京へ戻り、ふと「自分には何の保証もない」ということへの不安が押し寄せてきたそうです。
IT業界はなくならない
一時よりテレビへの出演が減った東京ダイナマイト。
それには、師匠たちからのアドバイスがあったからだといいます。
たけしさんからは「舞台やっている奴の時代がまた来るからよ」と言われ、立川談志さんからは「お前は寄席に出てろ」と。
このアドバイスを二郎さんは「お前はテレビ向きじゃねぇ、寄席なんだよ」という旨だと受け止めたそうです。
このことから、「劇場をきちんとやらないといけない」という意識に変わり、現在では吉本興業の劇場で、最後の出演者”トリ”を任されています。
そしてこの時、主軸を劇場に移すことで、自由な時間が意外とあるということに気が付いたそうです。
劇場芸人とITの相性
芸人の副業にはアパレルや飲食業などが多いのに対し、どうしてIT業界を選んだのか。
アパレルや飲食店は閉店に追い込まれるリスクがあるのに対し、ITはなくならないし、劇場の出番以外パソコン一つでどこでも仕事ができるという柔軟な仕事だからだと言います。
芸人一本では厳しい時代
「(生活費を稼ぐために)ウーバーイーツやるのもいいんです。四十(才)、五十(才)でバイト、生活は不安定でも全然いいんです。ただ、ダブルインカムというか、(芸人以外の副業で)がっつり両足でやってもいい時代になったんじゃないかなと思います。
バイト先でバイトリーダー目指すよりも、大工になって、あいつ家が建てられるぐらいの大工だよって言われるぐらいになる。そして劇場出たら獅子舞被って馬鹿やっている。それでいいんじゃないか。(芸人)一本で食べられる時代は、ちょっと終わったかなと思うんです」
引用元:現代ビジネス 「芸人一本の時代は終わった」会社員になったハチミツ二郎が見る未来(田崎 健太) | 現代ビジネス | 講談社(5/6)より一部抜粋
バイトリーダーより家が建てられる大工。
つまりは自身のスキルを磨いて自立できるくらいまでの環境を持っていく時代になってきているということですね。
まとめ
普通であれば45歳IT未経験がIT企業に就職することは難しいですが、このような思いと人とのつながりがあったんですね。
入社時、パソコン自体が初心者だった二郎さんですが、専門用語を駆使しながら順調にスキルアップしているそうです。
そこはやはり芸人さん、順応性の高さが伺えますね。
ワイドショーの司会やそこに出演する芸人さんたちが増えたのも、その順応性の高さからだと言われています。
そことは戦わず「劇場のトリ+ITサラリーマン」として斬新なスタイルを見出した姿は、ファンも驚いたのではないかと思います。
二郎さんが言うように、IT業界もなくならないですし、身に付けたスキルもなくならないです。
最近ではサッカーの本田圭佑さんまでプログラミングスキルを学習しているようです。
なくならない業界で、なくならないスキルを学ぶことは、賢明なことかも知れませんね。
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参考記事:現代ビジネス ハチミツ二郎がIT企業の正社員に…?「コロナ時代の芸人の生き方」
参考記事:現代ビジネス ハチミツ二郎「死を意識したことが、サラリーマン二郎のきっかけだった」
参考記事:現代ビジネス 「芸人一本の時代は終わった」会社員になったハチミツ二郎が見る未来